センチネルリンパ節診断法を革新的に発展させるためには、「体内のあらゆる場所のセンチネルリンパ節を高感度検出する手法の開発」および「がん転移危険部位を高粘度で特定する手法の開発」が必須である。申請者はこれまでに蛍光ナノ粒子をトレーサーとし、リンパ節転移危険部位である輸入リンパ管流入部を高粘度で可視化した(国際出願PCT/JP2010/54083)。この成果を臨床応用へ発展させるため、今年度は「(1)生体適合性の高い蛍光ナノ粒子の開発」、「(2)3次元蛍光画像解析を用いた高空間分解能の迅速病理診断手法の関発」を行った。 (1)蛍光性ナノ粒子の課題は粒子の安全性である。今年度、共同研究企業であるコニカミノルタ社とともに、生体適合性の高い新規有機系蛍光ナノ粒子の開発をすすめ、量子ドットの100倍以上の蛍光輝度を持つナノ粒子合成に成功した。この粒子をトレーサーとして、既存の蛍光計測系によりセンチネルリンパ節の検出能の評価、粒子径の違いによるリンパ系への移行能力・センチネルリンパ節の検出感度・検出時間・滞留性の評価、共焦点蛍光計測システムおよび電子顕微鏡を用いたセンチネルリンパ節組織内の蛍光分布についての検討を行った。結果、新規蛍光粒子では量子ドットに匹敵する診断粘度が得られた。 (2)がん手術においては、センチネルリンパ節を摘出してその内部のがん細胞の有無を迅速診断し、手術方針を決定する。蛍光診断にin vivoイメージングシステム(IVIS(R))を導入し、これまで2次元的であった伝移危険部位同定手法を3次元的・摘出直後に行うよう改良を加えた。結果、がん転移危険部位診断の精度向上・迅速性が獲得された。
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