本年度は「平成22年度に我々が研究開発した生体適合性に優れた新規蛍光ナノ粒子」と「1粒子蛍光画像解析装置」を用い、がん治療におけるセンチネルリンパ節診断への応用を視野に入れた研究開発を行った。ヒトがん細胞を免疫不全マウスに移植して担がんモデルマウスを作製し、量子ドットや新規蛍光ナノ粒子をがん部位近傍に注入した。蛍光トレーサーで標識されたリンパ節を摘出し、蛍光分布評価も含めた病理組織診断を施行した。その結果、リンパ節トレーサーとして生体投与した新規蛍光ナノ粒子は、これまで我々が示してきたように量子ドットとほぼ同様のリンパ節検出率を有することが示された。また、2光子顕微鏡を用い、摘出リンパ節の3次元的蛍光分布評価を行った。その結果、リンパ節内の量子ドットおよび新規蛍光ナノ粒子の分布を蛍光強度を指標として、3次元的に解析することに成功した。本研究で用いた新規蛍光ナノ粒子は既製の量子ドットに比べ、材質の面から安全性が高く、生体適合性に優れていると考えている。したがって、本研究により、蛍光粒子を使ったセンチネルリンパ節診断が、実用化へ向け前進していると考えられる。今後は、「新規蛍光ナノ粒子の組織内分布」と「リンパ節内のがん細胞の存在部位」の相関性を検討するとともに、新規蛍光ナノ粒子の排出経路の解析を進め、近未来における臨床試験の可能性を探る予定である。
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