研究課題
本研究課題では、原発性胆汁性肝硬変動物モデルマウスにおいて炎症抑制機能を有するB細胞亜群を同定し、抑制性B細胞による原発性胆汁性肝硬変における自己免疫性胆管炎の効果的・効率的な治療戦略を提言することを目的とした。本課題実施計画は、CD8陽性T細胞植肝臓炎症モデルにおいて、腹腔内B細胞亜群(CD11b陽性、陰性)およびCD11b陽性CD5陽性B-1a細胞とCD11b陽性CD5陰性B-1b細胞のいずれの細胞群による炎症抑制作用が有意に優れているかを検討し、マウスB-1a細胞が最も優れた炎症抑制作用を示した場合には、ヒト原発性胆汁性肝硬変患者のCD5陽性B細胞の炎症抑制機能を検討し、B細胞をターゲットとした新規療法開発への礎を築くものであった。しかし、平成22年度は米国カリフォルニア大学ガーシュインラボよりのモデル動物搬入までにはMTA締結から1-2年の期間を要することが明らかとなったため、米国ジャクソンラボより原発性胆汁性肝硬変モデルマウスを輸入する方針に変更し、見積金額を平成22年度科学研究補助金繰越申請し承認を得た。平成23年度にモデルマウスを輸入し、炎症抑制性B細胞についての検討を進めている。一方、平成22年度より共同研究者らと共に、炎症抑制機能を有する可能性が示唆されているCD5^+B細胞の局在を免疫組織化学的にCD20,CD5の二重染色を行いヒト原発性胆汁性肝硬変患者およびC型肝炎患者の肝臓組織にて検討を開始した。両疾患において門脈域内の濾胞様細胞集籏におけるB細胞にはCD5^+B細胞を認める一方、原発性胆汁性肝硬変患者にて見られる胆管浸潤B細胞にはCD5+B細胞を認めなかったことから、ヒト原発性胆汁性肝硬変患者肝臓組織において胆管上皮傷害へのCD5+B細胞の直接的関与は否定的と考えられる結果を得た。以上の結果に他の検討結果も加えて、平成23年度、共同研究者らと共に米国肝臓学会誌であるHepatologyに論文を投稿し、現在Inpress(Epub ahead of print)の状態にある。またウルソデオキシコール酸による標準療法への反応が不十分な原発性胆汁性肝硬変患者において抗CD20抗体によるB細胞除去療法を行ったパイロットスタディーについての論文を、共同研究者らと共にHepatologyに報告した。
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Hepatology
巻: 55 ページ: 512-21
DOI:10.1002/hep.24748
巻: (In press)
10.1002/hep.25511