研究課題
acl-10変異体およびipla-1変異体では、どのような分子機構で非対称分裂の異常が引き起こされているのかを明らかにする目的で、これらの変異体の表現型を抑圧するサプレッサースクリーニングを行った。これまでにいくつかのサプレッサー遺伝子を同定していたが、それに加えて、脂質ラフトと呼ばれる膜ドメインの構成成分の生合成に関わる遺伝子を同定した。これまでに同定したサプレッサー遺伝子も含めると、acl-10変異体およびipla-1変異体で見られる非対称分裂の異常には、逆行性小胞輸送、リン脂質代謝、脂質ラフトが関わる可能性が考えられた。また、acl-10の哺乳動物における機能を明らかにする目的で、acl-10の哺乳動物ホモログであるLYCATのノックアウトマウスを用いた解析を行った。acl-10は、PIのsn-1位にステアリン酸を導入する活性を有しているが、LYCATノックアウトマウスの様々な臓器において、この活性が顕著に減弱していることを見出した。また、LYCATノックアウトマウスの様々な臓器のリン脂質脂肪酸組成を解析したところ、PIの脂肪酸組成のみが顕著に変動しており、特にステアリン酸の量が減少していることが明らかとなった。この結果から、LYCATが線虫acl-10と同様、PIのsn-1位の脂肪酸組成を規定していることが分かった、また、ホスホイノシチド(PIP1,PIP2)の脂肪酸組成についても同様に変化していたことから、ホスホイノシチドの生体膜における局在や結合分子との親和性にも影響を及ぼすことが考えられる。LYCATノックアウトマウスの血球細胞数を解析したところ、血球の比率に異常が認められる個体が見られた。今後、造血幹細胞の非対称分裂や血球の分化についてより詳細に解析していく。
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Journal of Lipid Research
巻: Vol.53 ページ: 335-347
10.1194/jlr.M018655