本研究は、単純ヘルペスウイルスプロテインキナーゼ(PK)の試験管内アッセイ系を利用して、標的ウイルス基質および標的宿主細胞基質を網羅的に同定し、それらリン酸化の感染細胞およびマウス病態モデルにおける生物学的意義を解明すること、を目標とした。 (i )昨年、報告した通り、本研究によりウイルスPKがウイルス因子の1つであるUL47のSer-77をリン酸化し、その核移行を制御すること、ヘルペス性角膜炎の効率的な発症を司ることが明らかとなった。(ii) (i)の解析の過程で、申請者らは高感度質量分析計を用いたリン酸化プロテーム解析系を導入し、HSV-1感染細胞におけるリン酸化状態を網羅的に解析し、データベースを構築した。その結果、HSV-1 UL50にコードされるvdUTPase Ser-187のリン酸化が、in vivoにおけるHSVの中枢神経系(central nervous system)の破壊能すなわち神経病原性(Neurovirulence)を促進することを見い出した。 (ii)の知見は、第27回ヘルペスウイルス研究会、第37回国際ヘルペスウイルスワークショップ、第60回日本ウイルス学会学術集会において、その成果を発表済みであり、現在、論文作製中である。また、vdUTPase Ser-187研究における神経病原性の解析を共同研究に水平展開し、HSV-1 UL49にコードされるVP22が、強力な神経病原性因子であることも、国際学術誌であるJ. Virol. 86: 5264-5277.に報告した。
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