研究課題
個体レベルでのエイズウイルス(ヒト免疫不全ウイルス、HIV;サル免疫不全ウイルス、SIV)持続感染阻止に極めて重要な役割を感染急性期に果たしうることを申請者が近年証明したウイルス特異抗体の感染細胞レベルにおける防御効果の解析を目的に、初年度はサル末梢血単核球(PBMC)をエフェクター細胞、サルCD4陽性T細胞株を標的細胞とする抗体依存性細胞性ウイルス複製抑制(ADCVI)アッセイ系の確立を行い、また抗体のウイルス中和能の影響の評価を行った。本年度は、まずADCVIに関わる受容体を検索した結果、CD64(FcγRI)は関与せず、CD16は部分関与する可能性が示峻された。また前年度の結果を踏まえ、個体レベルにおけるADCVI能の感染防御に対する寄与を直接推定することを目的に加えた。そのために生理的濃度域(1mg/ml vs MOI=0.005)でウイルス中和能を有さず、ADCVI能のみを選択的に有することを確認した抗SIVポリクローナル非中和抗体(300mg)のSIV感染急性期における受動免疫を別途目的も兼ね行った。受動免疫時(感染後7日目)から3日後(感染後10日目)、7日後(感染後14日目)の血中ウイルス量及びCD4陽性T細胞数の変動を調べた結果、ウイルス量の削減率・CD4陽性T細胞数の保持率は非中和抗体受動免疫群(n=5)と対照群(n=6)の間で有意な差を認めなかった。また、非中和抗体受動免疫群における感染後14日目のエンベロープ領域の塩基配列解析を行ったところ、近年(Kent,2011)報告されたようなADCCエスケープに類するドミナントな変異選択は認めず、宿主内で選択圧がかかる水準のADCVI能を発揮するには極めて高い力価が求められることが分かった。以上から、エイズウイルス持続感染成立阻止におけるADCVIの寄与の度合いは、有効な細胞性免疫応答:の誘導に至るまでの補助作用に留まる可能性が示唆された。本結果は、抗体誘導型予防エイズワクチン開発への基礎情報を与えるものである
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J Virol
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