私はELISA法にて、皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉症、Sezary症候群)の患者の血清では、ケモカインの一つであるCCL20の濃度が上昇していることを発見した。また、表皮角化細胞からCCL20を誘導するサイトカインであるIL-17A、IL-22に関しても同様の検討を行ったところ、IL-22の濃度は上昇していたが、IL-17Aは検出できなかった。続いて、皮膚T細胞リンパ腫め病変部皮膚組織を用いて、CCL20、IL-17A、IL-22およびCCL20の受容体であるCCR6の発現を免疫組織化学染色で検討したところ、CCL20、IL-22、CCR6の発現は正常組織と比較して上昇していたが、IL-17Aは発現していないことが分かった。以上より、皮膚T細胞リンパ腫ではTh2細胞以外に、Th17細胞ではなく、Th22細胞が病態形成に関わっている可能性が示唆された。これにより、IL-22などに対する抗体療法が新たな治療の選択肢になりうると考えられた。今後は病変部皮膚組織より抽出したmRNAを用いて、上記のサイトカイン、ケモカイン、ケモカインレセプターおよび他の関連サイトカインの発現についても検討する予定である。 また、上記以外にケモカインの一つであるCCL11がその受容体CCR3を発現している細胞の生存、増殖に関与していることを、in vitroおよびマウスを用いたin vivoの実験で見出し、それにはERK1/2の経路が関与していることを発見した。これによりeotaxinやCCR3の抗体がCCR3を発現している腫瘍である皮膚原発未分化大細胞型リンパ腫の新たな治療の選択肢になることが考えられた。
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