研究概要 |
平成23年度は、平成22年度に引き続き好塩基球のメディエーター産生能と、亜鉛関連分子による好塩基球活性化の制御機構の解明、さらには亜鉛関連分子による痒疹発症機序の解明を目的とし解析をおこなった。まず、好塩基球のメディエーター産生能であるが、これまでロイコトリエン以外のアラキドン酸以外は産生しないとされてきた好塩基球が、実はプロスタグランディン(PG)合成酵素を発現し、IgE依存性の刺激下にPGを産生することを明らかとし、American Journal of Pathologyに論文発表した(実績参照)。次に、亜鉛関連分子による好塩基球の活性化の制御機構の検討であるが、昨年度までの解析で、好塩基球は、ZnT1,2,5,6,7、Zip6,10,13,14などの亜鉛トランスポーター、,メタロチオネイン1,2など、多種にわたる亜鉛関連分子を発現することが分かった。今年度はこれらの亜鉛関連分子の欠損マウスを用いた解析を行い、多種に及ぶ亜鉛関連分子の中でも亜鉛関連分子Xにより、好塩基球細胞内亜鉛シグナルが制御され、それにより好塩基球活性化が引き起こされることを明らかとした。また種々のシグナル分子の阻害剤や遺伝子ノックダウンを用いることで、これまで明らかにされていなかった好塩基球活性化に関与するシグナル伝達経路を複数明らかとし、そのいずれの経路が主に亜鉛関連分子Xにより制御されているのかを生化学的手法を用いた解析により明らかとした。さらに、ヒト末梢血由来の好塩基球を用い、メディエーターや亜鉛関連分子Xの発現をReal Time PCRで検討し、ヒト好塩基球も、マウス好塩基球と同様に、亜鉛関連分子Xが活性化に大きく関与することを明らかとした。現在は、亜鉛関連分子Xを介した痒疹発症機序の解明を目的に、亜鉛関連分子X欠損マウスを用い、痒疹モデルマウスの解析を行っている。
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