本年度は高齢者施設のうち療養病床に着目し、身体拘束と薬物の使用に関する実態を調査した。身体拘束のうち、ミトン等器具を用いる身体抑制の廃止に対する看護管理者の認識が身体抑制の関連要因であることを明らかにした。研究方法は無記名自記式質問紙による郵送調査とした。調査対象は福祉保健医療情報を公開しているウェブサイト(WAM-NET)上の全国の療養病床のある病院から無作為抽出した1435件で、回答は1病棟の看護管理者に依頼した。調査項目は基本属性、病棟体制、入院患者状況、身体抑制への取組み、身体抑制に対する認識、病院体制の6領域とした。抑制率は調査当日と1ヶ月以上継続している身体抑制の全数及び種類別(ベッド柵、車椅子での抑制、ミトン、つなぎ服)の件数を調査当日の入院患者数で除して算出し、その関連要因を検討した。調査は返送をもって研究協力への同意とした。結果は以下の通りである。回収数は389件(27%)で、そのうち医療療養型病床のみを有する231件を分析対象とした。回答した看護管理者は女性が97%、平均年齢は50歳であった。身体抑制ゼロだった病棟は46件(12%)にとどまった。調査日当日の抑制率の平均は全体で26%(種類別:ベッド柵19%、車椅子5%、ミトン9%、つなぎ服5%)だった。1か月以上の抑制率の平均は22%(種類別=ベッド柵17%、車椅子5%、ミトン8%、つなぎ服4%)だった。全体の抑制率との関連要因は、調査当日及び1か月以上とも看護管理者が「身体抑制をしないと転倒転落の頻度が増える」や「身体抑制は廃止すべきだが実際には無理である」という認識を持つほど抑制率が高かった(p<0.05)。種類別の抑制率の関連要因では、全種類において看護管理者が「身体抑制廃止に向けて前向きに取り組んでいる」という認識を持つほど抑制率が低かった(p<0.05)。以上より、看護管理者の身体抑制に対する認識が抑制率に強く関連することがわかり、管理者の認識へのアプローチの重要性が示唆された。
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