研究概要 |
今年度は、本研究で使用するインフルエンザウイルスマトリックス(M1)タンパク発現材料の作製と検出条件の設定を主に行った。本研究では、成熟粒子内に最も多く取込まれるM1タンパクの取込み様式について、「M1が多量体を形成した後に粒子内へ取込まれる」と仮説を立て、わずかなアミノ酸配列の置換によって異なる粒子形状を示す二つのインフルエンザウイルスA/Udorn/72由来M1とA/WSN/33由来M1、それぞれのM1タンパクの多量体形成能を比較する事で仮説の証明を目指している。そのため、M1-M1の相互作用を、細胞内で、あるいは試験管内で検出する必要がある。それぞれのM1タンパクをコードするcDNAの3'端に、Flag、6xHis、HAタグをコードする配列を付加し、哺乳動物細胞発現用のプラスミドへ組み込んだ。プラスミドトランスフェクション効率の高いヒト胎児腎由来293T細胞へ作製した各プラスミドを導入し、ウェスタンブロット法にてタンパク質の発現を確認したところ、6xHisタグを付加したM1以外で、発現が確認できた。さらに、共発現から共沈降を検出する際に必要となる、抗タグ抗体(anti-Flag,anti-HA)を用いて免疫沈降を行い、細胞内に発現しているM1をビオチン標識した後、anti-Flag抗体で沈降させることが出来た。しかし、これらの発現プラスミド、発現条件、沈降条件を用いて、行った共沈降実験では、非特異タンパクの共沈降が多く検出され、この系を用いてM1-M1の相互作用のみを検出する事は困難である事が明らかになった。そこで、現在は試験管内でタンパク質相互作用を検出を目指して、精製M1を大腸菌発現系を用いて作製中である。
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