研究概要 |
統合失調症のリスク遺伝子である可能性が示唆されているトリプトファン水酸化酵素2(tryptophan hydroxylase 2.TPH2)遺伝子が、統合失調症の発症脆弱性に果たす役割について明らかにすることを目的として、包括的な遺伝解析を遂行中である。 本年度は、リシークエンスにより検索された変異との関連についてスクリーニングを実施した。 まず、統合失調症と同様にTPH2遺伝子が有力な候補遺伝子と考えられている自閉症スペクトラム障害の患者150人についてTPH2遺伝子の全11エクソン領域をリシークエンスし、変異を検索した。その結果、rs78162420(S41Y)とこれまでに報告されていないミスセンス変異が同定された。この2つの変異に対し、統合失調症患者626人、対照者620人を対象とした遺伝子型判定を行った。rs78162420では統合失調症との有意な関連を認めなかった。一方、新規ミスセンス変異は患者ではヘテロが2に対し、対照者では0であった。有意な関連は認められなかったが、頻度がまれであり擬陰性の可能性も否定できない。これを確認するために、現在大規模サンプルでの関連解析を実施する準備を進めている。この結果の一部は、第32回日本生物学的精神医学会において発表済みである。 また、TPH2遺伝子には頻度の高い(common)コピー数多型(copy number variation, CNV)が存在することが報告されており、今後はこのCNVについてTaqManプローブを用いたリアルタイムPCR法によりコピー数を判定する予定である。 本研究により、統合失調症の発症機序解明の端緒が得られれば、最終的には画期的な診断・治療法の開発に結びつく可能性がある。
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