Crenarchaeota界に属するSulfolobus目の古細菌にはESCRT複合体の主要構成タンパク質であるESCRT-IIIとVps4が保存されており、細胞分裂に重要な役割をもつことが示されている。しかしながら、真核生物ではESCRT-IIIをその機能をはたすべき場所(細胞膜)へと誘導するいくつかの経路が確認されているが、古細菌のESCRT-IIIの細胞膜への移行についてはまったく不明であった。本研究では、新規ESCRT複合体因子であるCdvA(別名ERP)に着目し、その機能を明らかにするために構造生物学研究を行っている。CdvAの分子量は約27kDaであり、N末のβドメイン、続くヘリカルドメイン、及びC末端のTail(尾)領域からなる。申請者らは、平成22年度までに、CdvAのTail領域がESCRT-Шのウイングドヘリックスドメインと結合することをX線結晶構造解析により複合体の立体構造を決定することで明らかにした。また、CdvAのヘリカルドメインは膜結合能をもち、CdvAがESCRT-IIIを細胞膜へと誘導する際に重要な役割を果たしていることを明らかにした。また、CdvAのβドメインの立体構造を、1.8オングストロームの分解能で決定した。その結果、βドメインは、複数のβストランドからなるPRCバレル構造をとっていることが明らかとなった。また、ヘリカルドメインについても、約3.5オングストロームの反射データを得ており、今後構造決定及び、分解能の向上を試みる予定である。
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