近年、様々な加齢性疾患の原因として、ミトコンドリアより産生される酸化ラジカルによる酸化ストレスの蓄積が原因と成っていると考えられている。本研究では、老人性難聴の原因となるミトコンドリアDNA多型を同定するために、信州大学が中心となって実施している「熟年体育大学リサーチコンソーシアム」と連携して、参加者を対象に、インフォームドコンセントを取得の上、採血を行いDNAサンプルを得るとともに、聴力検査を行い、遺伝子相関解析を行っている。 平成22年度は(1)老人性難聴患者のDNAサンプル収集、聴力検査の集計、(2)老人性難聴関連候補遺伝子の一塩基多型(SNP)解析、(3)ミトコンドリア遺伝子変異に伴う難聴の新規変異および多型検索を行った。いままで得られたサンプルを用いて、日本人に多く認められるミトコンドリアDNA多型A3010G/A8701G/A10398Gの遺伝子型と8000Hzの聴力の平均との関連を検討したところ、3010番目の塩基では遺伝子型により平均聴力に有意に差があり、老人性難聴の原因であることが考えられる。それに対し、A8701G/A10398Gの遺伝子型と聴力には相関を認めなかった。多型解析には十分なサンプル数が必要であるため、現在もDNAサンプルを得る作業を行っている。 また、多型解析と共にミトコンドリア遺伝子変異および多型の検索を目的とするために、ミトコンドリアの全遺伝子配列16kbpに対して8kbp増幅用のPCRプライマーを用いてPCR増幅が可能かを確認しとこころ、LA Taqを用いることにより増幅が可能であった。現在、LA Taqを用いてミトコンドリア遺伝子を増幅後、直接シークエンス法により遺伝子解析を実施している。
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