電位依存性ナトリウムチャネル遺伝子SCN1A関連てんかんは、非常に重篤な乳児重症ミオクロニーてんかんから予後良好な熱性けいれんまで、幅広い臨床スペクトラムを呈す。近年、650以上のSCN1A変異が同定されており、遺伝子診断が早期診断確定につながると期待されている。その一方で、遺伝子型-表現型の相関は、未だ不明瞭な部分も多い。そこで本研究では、SCN1A関連変異におけるアミノ酸の物理化学的特性変化と表現型との関連を基にバイオインフォマティクス的手法による表現型予測モデルを構築し、新たな遺伝子異常に対する表現型予測モデルの構築を目指した。その結果、SCN1Aミスセンス変異において、いくつかのアミノ酸の物理化学的性質変化の大きさが表現型との相関に有意にかかわっていることを見出した。加えて、表現型との相関が得られた物理化学的性質変化を基に、確率モデルの一種であるSVMsを用いた表現型予測モデルを構築し、表現型分類精度を評価した。本研究で構築した表現型予測モデルは、既存の位置特異的なアミノ酸保存性スコアを指標とした手法を適用した予測モデルと比べても高精度に重症型SCN1Aてんかんに関与するミスセンス変異を分類することに成功した。加えて、表現型モデル構築の際に作成したSCN1A遺伝子変異データセットに、種々の情報を付加し、CUIベースのデータベースを構築した。将来的には、de novo変異に対して本手法を適用することで、その変異が表現型に及ぼす影響をある程度推測することが可能となり、遺伝子診断および予後予測への応用が期待される。
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