研究概要 |
小口径人工血管は、いまだに臨床使用上満足できる材料がないのが現状である。本研究では、それを解決すべく、独自技術を用いて「短鎖ペプチド」の細胞特異的親和性を見出し、内皮細胞に親和性が高く・平滑筋細胞に親和性の低いペプチド=CAG(Cysteine-Alanine-Glycine)を見出した。CAGを付与した小口径人工血管(生体吸収性ポリマーのε-polycaprolactoneをelectrospining法で紡糸して作製)を開発し、それを用いてラット頸動脈置換手術(直径0.7mm、長さ7mm)を行い、有効性(迅速な機能的内皮化:-内皮化率・eNOS発現亢進-と、新生内膜抑制効果の可能性:-αSMAの発現低下・新生内膜肥厚の欠如-)を示した。さらに、長期的な開存性や組織学的変化を検討するために、頸動脈置換手術後1,2,6,12,24,48,72週で人工血管を摘出し、各種染色を施した。72週経過しても、破裂や瘤形成を起こすことはなかった。内皮細胞は早期から再生し始めて、6週ではほぼ完全に内皮化された。一方で、平滑筋層については、12週程度からαSMA陽性細胞が出現しはじめ、その後経時的に増加していった。しかし、十分な平滑筋層を形成せず、平滑筋細胞の高度分化マーカーは発現していなかった。また、人工血管を構成する生体吸収性材料については、72週経過しても完全には消失しなかった。今後は平滑筋層の再生を促すようなペプチドの付与を行い、より機能的な人工血管=再生血管を開発する。
|