研究課題
本研究の目的は、肺がんの新規腫瘍マーカーの探索と新規治療標的分子の開発を行い、早期診断、予後診断、薬剤感受性診断を含めた血清マーカー・組織診断予後マーカーや新規治療薬として臨床応用することである。平成22年度も、これまで行ってきた手法と同様に約120症例の肺癌cDNA microarray解析結果から膜・分泌タンパクをコードする候補遺伝子を抽出し、RT-PCR、Western blotなどで肺癌と正常肺での発現を確認し、腫瘍マーカー候補の絞り込みを行った。これまで我々は多数の候補タンパクについて報告してきているが、新たに有望な候補タンパクとしてLASEP3(Lung cancer serum protein 3)を同定した。市販抗体を用いてELISAシステムを構築し、肺癌、健常者血清を用いて検討したところ、高感度な肺がんマーカーであることがわかった。更に、既存の腫瘍マーカーであるCEA、CYFRA21-1、proGRPと組み合わせることで肺がん患者の80%を検出することができた。また、作製した約400症例の非小細胞肺がんのTissue Microarrayを用いて、抗体染色を行ったところ、LASEP3発現陽性症例は、陰性症例と比べて、有意に予後不良であり、術後肺癌の予後マーカーとして有効であると考えられた。また、siRNAでLASEP3の発現を抑制したところ、がん細胞の増殖が抑制され、肺がんの増殖に関与するタンパクであることがわかった。他方、Microarrayの結果から、乳がん、大腸がんでもLASEP3の発現が高いことがわかっていたため、乳がん、大腸がん患者血清中のLASEP3を測定したところ、健常者と比べて、有意に高濃度であることがわかり、肺がん以外の臓器のがんでも有用な血清マーカーであることが明らかになった。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Cancer Research
巻: 70 ページ: 5326-5336
International journal of cancer
巻: 129