研究概要 |
培養可能な精子幹細胞であるGS(Gemline Stem)細胞は精子形成能を保ったまま試験管内で安定に増殖するが、培養中に多能性幹細胞であるmGS(multipotent GS)細胞を生じる場合がある。GS細胞からmGS細胞へ変化する機構は不明である。本研究では低分子RNAによるリプログラミング遺伝子の制御に着目し、低分子RNA機構がmGS細胞化を制御するかどうか調べるとともに低分子RNA機構の破綻によるmGS細胞誘導を試みる。平成22年度に低分子RNA経路関連遺伝子欠損及びノックダウンGS細胞の作製、平成23年度にそれら変異GS細胞の表現型の解析及び低分子RNA経路遺伝子制御によるmGS細胞誘導法の検討を行う計画である。 本年度は低分子RNA経路に重要なDicer遺伝子のコンディショナル欠損マウスよりGS細胞を樹立した。このGS細胞にCreリコンビネースを発現するアデノウイルスベクターを感染させてDicer遺伝子欠損GS細胞を作出した。Dicer遺伝子欠損GS細胞はGS細胞の性質を保ったまま維持培養する事ができた。また、他に低分子RNA経路で重要なDrosha, Dgcr8, Argonaute, Lin28遺伝子についてshlRNAによるレンチウイルスノックダウンベクターをGS細胞に感染させた。Puromycin添加により、安定してshRNAを発現し、それぞれの遺伝子発現レベルが低下したGS細胞を作出する事ができた。またmGS細胞化の指標となるNanog遺伝子のプロモータ下流でGFPを発現するトランスジェニックマウスよりGS細胞を樹立した。 平成23年度は平成22年度に作製した変異GS細胞についてリプログラミング遺伝子発現など分子遺伝学的解析を行い、それらから得られた知見を利用してmGS細胞の誘導方法を検討する。
|