研究概要 |
遺伝子編集酵素activation-induce dcytidine deaminase (AID)を過剰発現する胃上皮細胞において、既知のすべての遺伝子DNAの塩基配列と染色体異常についてゲノムアナライザーおよび高感度CGHアレイを用いて網羅的解析を行い、胃上皮におけるAIDの持続発現の結果生じる遺伝子異常生成・蓄積の全体像を明らかにする。 1)活性化AIDを過剰発現する胃上皮培養細胞株の樹立およびAIDトランスジェニック(Tg)マウスから胃上皮を採取し、AID過剰発現下の胃上皮細胞における体細胞変異の全体像をゲノムアナライザーを用いて検討する。また、野生型マウスにヘリコバクター・ピロリ(HP)菌を経口感染させると、胃上皮細胞に内在性AIDが発現誘導され、遺伝子変異生成の有無をゲノムアナライザーを用いて網羅的に検討したところ、癌関連遺伝子に変異を認めた。一方、AIDノックアウト(KO)マウスにHP菌を感染させても遺伝子変異を認めなかった。 2)AID過剰発現下の胃上皮細胞における遺伝子DNAコピー数の変化および染色体異常(転座、欠失など)の有無につき、CGHアレイ法による解析を行ったところ、癌関連遺伝子に欠失を認めた。引き続き、CGHアレイ法により同定された染色体欠失想定部位に対し、Fluorescent in situ hybridization (FISH)法を施行したところ、染色体欠失が生じたことが確認された。また、野生型マウスにHP菌を感染させることにより、胃上皮細胞に内在性AIDが発現誘導され、癌関連遺伝子DNAコピー数の減少を認めた。一方、AID KOマウスにHP株を感染させても癌関連遺伝子DNAコピー数の減少を認めなかった。 1),2)の結果から、胃上皮におけるAID異常発現により、遺伝子異常生成がAID依存性に引き起こされることが示唆された。
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