研究概要 |
【目的】生体肝移植において過少グラフト(SFSG)の成績は依然として不良である。本研究においてラットSFSG肝移植モデルを用い、一酸化窒素及び酸素の直接投与がSFSG保存にいかなる影響を与えるかを検討した。【方法】ドナー体内で70%肝切除後、30%の肝グラフトを(A)Control:単純冷保存(B)VSOP(Venous Systemic Oxygen Persufflation)酸素投与保存(C)VSOP+NO(Venous Systemic NO(40ppm)with Oxygen Gaseous Persufflatio)酸素+一酸化窒素投与保存で3時間の冷保存後、レシピエントへ移植。1時間(h)、3h、24h、168h後に次の項目を検討。(1)門脈圧・血流量、レーザードップラーによる肝微小循環測定(2)血清中AIT, AST, LDH【結果】(mean±SEM : Control/VSOP/VSOP+NO).VSOP+NO保存により(1)移植後門脈圧低下(p<0.0001:9.9±0.6/11.3±0.3/8.7±0.4mmHg at 24h ; posttest:p<0.01)(2)移植後門脈血流量増加(p<0.0001:9.2±0.6/10.2±0.8/18±1.5ml/min at 1h ; posttest:p<0.001)、微小循環改善(p<0.0001)(3)移植後のAST(p=0.0015), ALT(p=0.0021:303±72/187±37/118±9.6IU/L at 3h ; posttest:p<0.001), LDH(p=0.0020:3949±1334/3006±647/1457±135IU/L at 3h ; posttest:p<0.001)の減少を認めた。【結論】ラットのSFSG肝移植モデルにおいて、一酸化窒素と酸素を投与しながらの冷保存により、移植肝の微小循環は改善され、移植肝障害が有意に抑えられた。臨床においても過少グラフトの成績を画期的に改善する可能性があることが示唆された。
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