研究概要 |
i)膀胱癌細胞株およびマウス化学発癌モデルにおけるILKの発現解析 膀胱癌細胞株におけるILKおよび、上皮間葉移行に関わる分子の発現を確認すると、E-Cadherinの発現が低下している間葉性の表現型を示すものでILKの発現が亢進している傾向が認められた。また、6-8週齢のC57BL/6マウスにN-Butyl-N-(4-hydroxybutyl)Nitrosamine (BBN)を経口投与し、上皮内癌(CIS)から浸潤性膀胱癌に至るまでの各段階におけるILKの発現を免疫染色法にて評価するとILKの発現はCIS,浸潤癌と進展するにつれ発現上昇していた。 ii)ILKの過剰発現およびノックダウンにおける膀胱癌細胞の表現型の評価 上皮性の表現型を示し、ILKを低発現する253J膀胱癌細胞株に恒常的活性型のILKを導入し、同様に、間葉性の表現型を示し、ILKを高発現する二つの膀胱癌細胞株、TCCsup,UMUC3においてILKをsiRNAでノックアウトし、表現型の変化を評価した。前者では細胞増殖は変化しなかったが、細胞浸遊走能および細胞浸潤能の亢進が認められ、後者では細胞遊走能、細胞浸潤能の低下が認められた。 iii)ILKの下流分子の変化とメカニズムの解明 TCCsup細胞においてILKをノックダウンするとGSK3βのリン酸化が抑制され、E-Cadherinの上流であるZeb1およびE-Cadherinの発現が抑制された。UMUC3細胞においてはZeb1の発現抑制は見られなかったが、Snailの発現低下とMMP9の発現低下が確認された。 iv)ヒト膀胱癌臨床検体におけるILKの発現の評価 30症例の膀胱癌臨床検体を含むTissue Microarrayを用いてILKの免疫染色を行うと、ILKおよびMMP9の発現は膀胱癌の浸潤性と正の相関を示し、E-Cadherinは負の相関を示した。
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