昨年度セットアップしたトプコン社製の長波長プローブ搭載型波長走査型光干渉断層計(swept source optical coherence tomography : SS-OCT)プロトタイプを用いて、今年度は疾患眼データ取得をさらに進め、様々な進行度の緑内障眼200眼及び強近視眼200眼という目標数を上回るデータ収集が可能であった。京都OCTリーディングセンターにて3次元解析ソフトウェアを開発し、篩状板の形態と篩状板の位置を表すパラメータを自動で算出することを可能にした。そして形態パラメータが緑内障眼と健常眼とで有意に異なることを見出し、篩状板の変形が緑内障眼と健常眼に比べて著明であることを明らかにし、篩状板変形が緑内障視神経症における視神障害に関与している可能性について第22日本緑内障学会にて報告した。その篩状板変形は既報の組織学研究結果に矛盾しなし結果であり、脳脊髄液圧と眼圧との圧力差が一因になっている可能性を示唆するものであった。 また、強度近視眼の視神経乳頭周囲強膜の変形の描出にSS-OCTは非常に優れていることを明らかにし、強度近視眼の視神経乳頭周囲の強膜変形の関連する視野障害が存在する可能性について見出した。また、視神経周囲強膜変形の程度は網膜神経線維層の菲薄化及び視野障害の程度と相関していることを明らかにした(論文準備中)。強度近視眼においてくも膜下腔が拡大してしいること、強度近視眼で強膜が非常に菲薄化していることも確認できた。 篩状板への栄養血管であるZinn-Haller動脈輪を安定して描出することはSS-OCTを用いても困難であることが明らかとなり、現状のSS-OCTでの限界であると考えられる。 しかしながら、正常眼圧緑内障の視神経脆弱性を篩状板形状から判定するレベルにはまだ至っていない。今後は症例毎の更なる詳細な比較とともに経時的な変化、治療に対する変化と治療効果を比較することでデータを蓄積していく予定である。
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