近年、新卒の看護師の離職率の高さが問題となっている。その原因として、臨床現場で必要とされる臨床実践能力と看護基礎教育課程で習得する看護実践能力との乖離による知識・技術の未熟さが指摘されている。感染予防は看護技術の基本となる概念であり、医療安全の面からも看護基礎教育課程において習得が望まれる技術である。本研究の目的は(1)医療施設が新卒看護師に期待する具体的な感染予防の知識・技術について明らかにすること、(2)看護基礎教育課程修了時に学生が習得すべき感染予防に関する知識・技術項目について実践現場で働く看護師と教育課程の教育者の合意に基づいて作成することである。 平成22年度は、医療施設が新卒看護師に期待する具体的な感染予防の知識・技術について明らかにすることを目的にインタビュー調査を実施した。インタビュー対象者は医療施設における感染制御業務、感染予防教育の中心を担い、3年以上の経験のある感染管理認定看護師6名とした。施設規模などによる体制の違いを考慮して対象者を選択した。現在インタビュー内容の分析を行っている。その結果から、感染予防の知識と技術についての項目の枠組みを作成し、調査票を作成する予定である。作成した調査票は感染管理認定看護師と教育課程の教員を対象にデルファイ法にて2回質問紙調査を実施する予定である。 本研究により臨床現場で必要とされる臨床実践能力と看護基礎教育課程で習得する看護実践能力との差を縮め、教育課程における教育内容の充実、新卒看護師の技術に対する不安の緩和、医療関連感染や針刺しなどのリスク低減に寄与することが可能と考える。
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