本研究では、社会心理要因に関する質問紙、生化学的・生理学的指標等を用いた系統的な分析を行い、社会心理要因と飲酒習慣の循環器疾患抑制効果のメカニズムを検証することを目的している。 本研究仮説は、社会的サポート・ネットワークが少ない者では、少量~中等量の飲酒において、これら社会心理的要因が良好な者に比べ、自覚的ストレスが高いことに加えて、インスリン抵抗性が高い、中性脂肪値が高い、起床時血圧が高い、夜間から翌朝の交感神経が優位、中心動脈圧が高い等である。 本年度は、茨城県C市K地区において平成22年11月~平成23年2月に実施された循環器健診の受診者約1700人を対象として、問診・質問紙調査による社会的サポート・ネットワーク、うつ、自覚的ストレス等の社会心理要因、飲酒習慣、喫煙習慣、食生活、身体活動、睡眠時間等の生活習慣の把握や上腕血圧、HDL-コレステロール等の血清脂質、血糖値、BMI等を得た。また、今年度はインスリン測定を全員に、健診受診者のうち40-75歳の男性約700人に対して中心動脈圧(AI:augmentation index)の測定を実施した。問診・質問紙調査の結果、1人暮らし約4%、家族は平均2.9人、親しい友人平均2.5人、相談できる親類、家族は平均3.1人であった。またストレスを大いにあるいはかなり感じている者は約15%、最近1カ月で何事にも興味がわかない、希望が持てないがそれぞれ約5%、情緒的なサポートがほとんどないと感じている者は約4%であった。インスリンの平均値は7.69±13.9μU/mlであった。 次年度は、生化学的、生理学的指標の集計、分析を行い、社会的サポート・ネットワーク等の社会心理要因の多寡による飲酒習慣関連の循環器疾患リスクファクターへの影響を横断研究によって明らかにする。
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