血管を構成する細胞群の中でも血液の血管外漏出を防ぐバリアーとなる血管内皮細胞は、急性の炎症反応において、炎症性サイトカインによって活性化され細胞骨格のリモデリングを引き起こすことが知られている。本研究では、血管内皮細胞の炎症時における機能に着目し、炎症性サイトカインTNF-aによって発現誘導されるタンパク質リン酸化酵素NUAK2と、その基質として同定した細胞骨格の制御にかかわる分子MYPT1の機能解析を行い、TNF-aによって活性化される血管内皮細胞の機能にNUAK2-MYPT1シグナルがどのようにかかわっているかについて明らかにすることを目的とした。 本年度は、昨年度に引き続きNUAK2活性化機構の解明のために、NUAK2の自己リン酸化候補部位の絞り込みを行った。いくつかの変異体タンパク質を作成しリン酸化解析を行い、数か所の自己リン酸化部位が存在することを明らかにした。 次にNUAK2-MYPT1のシグナルが、培養血管内皮細胞において果たす役割を明らかにするために、ヒト臍帯血管内皮細胞の初代培養系を使用した。血管内皮細胞においてNUAK2ノックダウンを試みたところ、昨年度の培養細胞株での検討と同様の表現型、すなわち細胞形態の著明な変化を示した。この表現型に対する種々のMYPT1リン酸化変異体を用いたレスキュー実験を試みた。さらに、研究計画で示したように本年度は、ゼブラフィッシュを用いたin vivo血管内皮細胞の機能アッセイ系を立ち上げ、ゼブラフィッシュでも保存されているNUAK2-MYPT1のin vivoにおける機能解析を開始した。NUAK2アンチセンスモルフォリノの投与は、顕著な致死的表現型を示し、in vivoにおけるNUAK2の重要性が示唆された。
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