我々はヒト精巣腫瘍における転移促進因子の同定を目指し研究を行っているが、以前に報告した研究の中で我々はヒト精巣腫瘍セミノーマ由来株であるJKT-1及びその高転移変異株であるJKT-HM用い、JKT-HMの培養上清中に含まれる分泌蛋白遺伝子SERPINE2がJKT-1マウス皮下投与モデルにおいて、リンパ節転移を促進している可能性を見出した。この研究の中で、SERPINE2の一時的ノックダウン及び強制発現を実験手法として行ったが、より確実な結果を得る事を目的としてまずSERPINE2安定発現JKT-1の樹立を行った。 我々はこの1年間で遺伝子工学的手技を用いて、SERPINE2安定発現JKT-1を5株作成することに成功した。遺伝子導入のセレクションにG418を用いたが、至適濃度の設定に難渋したために強制発現株を樹立することに非常に時間を要した。これらの強制発現株についてのin vitroにおける増殖能や浸潤能についての評価は現在行っているところである。また同時にSEPINE2ポリクローナル抗体の作成を行う予定としていたが、前述した強制発現株の樹立に時間を要したために、これについてはまだ実験の途中段階である。今年度は強制発現株を用いたin vivoの実験及びSERPINE2ポリクローナル抗体の作成を行い、抗体の作成が可能となれば、精巣腫瘍臨床検体を用いたSERPINE2の発現様式についての検討を加える予定としている。
|