我々はヒト精巣腫瘍における転移促進因子の同定を目指し研究を行っており、以前にヒト精巣腫瘍セミノーマ由来株であるJKT-1及びその高転移変異株であるJKT-HM用い、JKT-HMの培養上清中に含まれる分泌蛋白遺伝子SERPINE2がJKT-1マウス皮下投与モデルにおいて、リンパ節転移を促進している可能性を見出した。 本年度は、まず昨年度に樹立したSERPINE2安定発現JKT-1を用い、これをヌードマウスに皮下移植することによるリンパ節転移の評価および尾静脈投与することによる肺転移の評価を行ったが、いずれの実験系においてもSERPINE2強制発現JKT-1群において、コントロール群に比し有意な転移の促進を認めなかった。SERPINE2強制発現JKT-1のin vivoにおける有意な転移促進効果を認めなかったため、抗体作成に先立ち臨床凍結検体におけるmRNAレベルでのSERPINE2の発現様式を検討したが、SERPINE2の発現と診断時転移の有無について、統計学的に有意な相関を得ることができなかった。この結果を踏まえ、抗体作成および臨床検体における免疫組織学的評価によるSERPINE2発現様式の検討を断念し、本研究を終了した。
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