研究概要 |
樹立したホルモンかつタキサン系抗癌剤抵抗前立腺癌細胞株(PC3-tR)にIGF-1Rアンチセンスオリゴをトランスフェクションさせた細胞よりmRNAおよび蛋白を抽出し、real time RT-PCR、Western blot法によりmRNAおよび蛋白レベルでの標的であるIGF-1Rのサイレンシングが容量依存的にかつシークエンス特異的に生じていることを確認した。次に、アンチセンスオリゴ単独およびタキサン系抗癌剤と併用した場合の殺細胞効果をMTTアッセイおよびフローサイトメトリーにて解析し両者には相乗的な効果を認めることを確認した(combination Index<1.0)。細胞増殖およびアポトーシス誘導関連のシグナル伝達経路における標的遺伝子発現阻害の意義を検索するためWestern blot法を用い、上記併用療法にて治療した細胞の蛋白レベルでのpATK,pMAPKの発現レベルの低下およびcPARP等のアポトーシス誘導蛋白の発現亢進を確認した。次に動物実験系として、ヌードマウスを用いPC3およびPC3-tR細胞を皮下接種し腫瘍が形成された時点でIGF-1Rアンチセンスオリゴ投与およびミスマッチオリゴ単独投与の2群、さらにパクリタキセルとの併用療法を加えた2群を設定し治療を行い腫瘍体積により効果を評価した。いずれの細胞株においてもIGF-1Rアンチセンスオリゴは単独療法、併用療法ともに統計学的有意差をもって腫瘍の増殖を抑制することが認められた。以上の結果より、タキサン系抗癌剤抵抗前立腺癌に対するIGF-1Rアンチセンスオリゴ療法はin vitroおよびin vivoの実験系において有効であり、タキサン系抗癌剤耐性克服の一助となる可能性が示唆された。
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