平成22年度は、遺伝子導入プラットフォームを搭載した人工染色体ベクターに、目的遺伝子を導入するためのベクター構築及び抗体医薬産生細胞作製に適した人工染色体ベクターの改変を中心に行った。 抗体医薬産生細胞において導入遺伝子が安定発現されることは重要であり、そのためにインシュレータ等の導入遺伝子を安定化させる仕組みをベクターに搭載することが必要である。平成22年度は、遺伝子発現効率の検証に用いるルシフェラーゼ遺伝子を既知及び新規インシュレータ配列の両方で挟んだベクターを構築した。また、それぞれの配列で遺伝子を挟んだベクターも構築しており、どのコンストラクションが遺伝子の安定発現に最も効果があるか検証する予定である。 平成22年度の研究計画では、遺伝子導入ユニットの増幅法の確立、導入遺伝子発現効率の検証が目標であったが、新しく得られた知見から研究実施計画を変更した。当初は、すでに開発済みであった遺伝子導入プラットフォーム搭載ヒト人工染色体ベクターを用いて研究を遂行する予定であったが、その後げっ歯類由来細胞内でより導入遺伝子が安定な人工染色体ベクターが開発された。抗体産生細胞として利用するCHO細胞においても有用性が期待できることから、新たに開発された人工染色体ベクターに遺伝子導入プラットフォームを導入し、当該ベクターを用いて抗体医薬産生細胞を作製することとした。すでに目的の人工染色体ベクターの作製は成功しており、導入したプラットフォームの機能もPCR及びFISH解析等により確認できている。 新たなベクターを作製したことにより研究推進は遅れたが、本研究の目的を達成するためには必要な変更であった。平成23年度は、遺伝子導入ユニットの増幅、ベクターコンストラクションの比較、候補遺伝子の導入・発現量の評価を迅速に遂行する。
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