研究概要 |
歯周病の主たる病態である歯槽骨の破壊の分子基盤を明らかにすることを目的として、歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis (P.g.)の感染による骨代謝への影響について実験を行なっている。マクロファージ由来破骨前駆細胞はReceptor Activated NF-kappa B Ligand (RANKL)により破骨細胞へと成熟分化するが、RANKLによる分化誘導の初期にP.g.を感染させると破骨細胞への分化を阻害することを示した。この抑制の分子メカニズムを調べるために、P.g.感染による免疫応答を考慮して、免疫応答に関わるToll-like receptor (TLR)やその下流因子に注目して、それぞれの因子を欠損したノックアウト(KO)マウス由来のマクロファージ細胞(BMM)を用いて検討した。その結果、TLR2-KOとMyD88-KO BMMにおいて破骨細胞の形成が認められた。またTLR2-KO BMMにおいては60-70%の割合で破骨細胞の分化が認められ、TLR2の部分的な関与が考えられた。一方で、骨代謝における重要な細菌感染として結核菌による骨結核感染症がある。同様に結核菌に感染した場合においても破骨細胞の分化に影響を与えるものなのか検討した。結核菌は生菌を使用せずに熱処理した死菌を用い、さらにはウシ型結核菌(BCG)の死菌も用いて破骨細胞分化への影響を検討した。その結果、P.g.感染と同様に結核菌,BCGの死菌でもTLR2-KO BMMにおける破骨細胞分化が70%程度認められ、MyD88-KO BMMにおいて破骨細胞の形成が認められた。従って、細菌感染による破骨細胞分化抑制には、自然免疫応答の重要因子であるTLR2とMyD88が関与していることが明らかとなった。
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