抜去歯牙から採取したヒト歯髄培養細胞およびヒト歯根膜細胞から、歯髄細胞由来幹細胞と歯根膜細胞由来幹細胞の単離を行い、脂肪細胞への分化に関わる、メチル化サイレンシングを受けたDNAの網羅的探索を行うことにより、それに関わる分化制御システムを明らかにし、さらに、詳細に幹細胞の性質を比較し、脂肪細胞以外の細胞種への分化制御も明らかにすることで再生医療に貢献できると考えた。そこで、歯根膜組織、歯髄組織に多彩な分化能を持つ幹細胞が存在すること、また、細胞表面抗原SSEA-4を用いてフローサイトメトリーを行うことで、これらの分化能を持つ細胞を効率よく採取し、この方法によって得られた細胞を用いて、プロモーターがメチル化された分化能に関わる遺伝子をMIAMI法によって検索し、さらにその領域をバイサルシークエンシング法にて特定することが本研究の目的であった。まず、歯髄細胞由来幹細胞と歯根膜細胞由来幹細胞の採取と培養組織からの幹細胞の単離、脂肪細胞への分化に関わる、メチル化サイレンシングを受けたDNAの網羅的探索を行った。具体的には、抜去歯から分離したヒト歯根膜細胞、歯髄細胞を細胞培養ディッシュ上で採取した。次に、フローサイトメトリーを用いて、SSEA-4陽性細胞をヒト歯根膜組織、歯髄組織にて単離した。その単離した細胞からゲノムDNAを採取し、MIAMI法を用いてメチル化している遺伝子を網羅的に解析した。MIAMI法を用いてメチル化している遺伝子を網羅的に解析したが、直接脂肪細胞への分化制御に関わる因子の特定には至らなかった。しかし、それぞれの幹細胞からゲノムサンプルを採取できた点、かつ脂肪細胞への分化能以外の相違点について、今後検討を進める基盤となり、意義あるものと考えられる。
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