研究概要 |
歯周病において歯肉上皮は細菌が歯周組織に侵入する際の最初のバリアとして重要な役割を担っており,上皮の細胞間,もしくは上皮と歯の結合が破壊されることは歯周病のさらなる進行につながると考えられる。本研究の目的は,歯肉上皮細胞においてTGF-βが細胞間接着因子の発現を制御すると仮説をたて,そのメカニズムを解明する事である。まず我々は培養ヒト歯肉上皮細胞をActinobacillus actinomycetemcomitans (A.a菌)の生菌と共培養し、歯肉上皮細胞内にA.a菌の侵入が認められるのか確認した。しかしながら歯肉上皮細胞内にA.a菌が侵入したことは確認できなかった。次にA.a菌が歯肉上皮細胞の結合を破壊し細胞間に侵入するとの仮説を立て、歯肉上皮細胞の細胞接着因子がA.a菌との共培養によりどのように変化するのか確認するため、細胞接着因子のひとつであるE-cadherinの発現量をウエスタンブロット法を用いて確認した。A.a菌との共培養群ではE-cadherinの発現が減少したことから,A.a菌との共培養により細胞接着が破壊されることが示唆された。次にTGF-β群がE-cadherinの発現減少に関与しているかどうか確認するため,定量PCR法を用いてTGF-β群の発現量を確認した。A.a菌と共培養した群においてTGF-β1のみ発現量の減少が認められた。また細胞増殖能もA.a菌と共培養群で減少することが認められた。A.a菌の刺激によりTGF-β1がどのようなメカニズムで発現が制御されるのかは未だ不明である。今後は歯肉上皮細胞において細菌による刺激がどのようなシグナル伝達系を介して細胞接着因子に影響を与えるのか調べていく予定である。
|