研究概要 |
本年度は、(1)ブタ下顎頭由来初代培養軟骨細胞に対する低出力超音波(LIPUS)照射における軟骨基質遺伝子発現の変化、ならびに、(2)主要な炎症性サイトカインであるIL-1β添加下の同細胞に対するLIPUS照射が、Cyclooxygenase -2(COX-2)発現にかかわる細胞内シグナル伝達系に与える影響について、Light Cycler[○!R] (Roche diagnostics)を用いたRealtime PCR法とOdyssey[○!R] (LI-COR biosciences)を用いた定量WesternBlotting法により検討を行い、以下の知見を得た。 1.LIPUSによる軟骨基質遺伝子発現の変化について、LIPUS照射群では非処置群に比べ照射3,12時間後のAggrecan、Type II collagen遺伝子発現が亢進した。 2.IL-1β添加下で見られるCOX-2発現に関わる細胞内シグナル伝達系の検討について、IL-1β添加後にLIPUSを照射した群ではIL-1β添加のみの群に比べ照射直後から20分後におけるβ1インテグリンのリン酸化が亢進し、照射40-60分後におけるMEK 1/2タンパク質のリン酸化が抑制された。 以上の研究成果により、LIPUSは軟骨基質代謝を促進し、一方LIPUSが炎症下の下顎頭軟骨における過剰なCOX-2を抑制する機構に機械的受容体であるβ1インテグリンのリン酸化とMEKリン酸化の抑制が関与していることが推察された。本結果は、超音波照射の疼痛緩和を目的とした利用におけるエビデンスに寄与するものであると考えられる。
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