研究概要 |
D-dopachrome tautomerase (DDT)は脂肪細胞に作用して脂質代謝を制御するアディポカインである。DDTm RNA発現低下が肥満者の脂肪細胞で認められることから、その脂肪細胞での発現と肥満との関連が示唆される。従って、DDT転写調節機序が明らかになれば、肥満の予防・治療法への開発に応用でき.る可能性がある。本研究ではDDT遺伝子の転写調節領域を同定するため、DDT遺伝子の転写開始点より上流約3000bpの塩基配列を挿入したルシフェラーゼベクターを前駆脂肪細胞株SGBSに導入後く脂肪細胞への分化誘導を行った。分化誘導後、3日目にルシフェラーゼ活性が上昇したことから、1)この部位にDDT遺伝子の転写を正に制御する領域があること、2)DDT遺伝子は脂肪細胞分化に伴い発現が上昇することを見いだした。さらに様々な長さの転写調節候補塩基配列を挿入したルシフェラーゼベクターを構築し、同様め方法によりDDTプロモータ領域を同定した。またDDTと同様に脂肪細胞分化に伴い発現が上昇する転写因子Kruppel, likezinc finger transcription factor-15(KLF15)をSGBS細胞に強発現させた際のDDT遺伝子発現に対する影響をリアルタイムRT-PCR及びルシフェラーゼ活性の測定により検討したところ、KLF15はDDT遺伝子の転写に関与しないことが分かった。現在は脂肪細胞分化に伴い発現が上昇する転写因子群の発現ベクターの構築を行っており、上記の方法によりDDTの転写調節に関わる因子の同定を行う。
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