研究概要 |
本研究では骨格筋量の調節に関与するマイオスタチン遺伝子のRNAiを応用して骨格筋量の制御とその機能回復を図り、筋ジストロフィーに対する全く新規の治療法を開発することを目的として、平成22年度にはマウス咬筋へのマイオスタチン特異的siRNA局所・全身投与によるRNAi効果の確認を行った。 具体的方法として20~24週齢の野生型雄性マウス(C57BL/6,C3H)と筋ジストロフィーモデル雄性マウス(mdx mouseおよびmutant-caveolin-3transgenic mouse)の咬筋にマイオスタチンsiRNA+アテロコラーゲン複合体を局所投与し、2週間後に咬筋を摘出して解析を行った。全身投与に関しては、同上のマウスに対してマイオスタチンsiRNA+アテロコラーゲン複合体を眼窩下静脈叢より2週間以内で3日ごとに4回に分けて投与し、最終投与後1週間の待機期間を経た後、咬筋と前脛骨筋を摘出して解析を行った。局所投与では咬筋重量は、対照側と比較して投与側にて有意に大きい値を示し、HE染色像からは筋線維断面積の肥大が確認された。さらに、各筋においてマイオスタチン遺伝子発現量の低下が認められた。全身投与では、局所投与ほどの重量の変化は認あられなかったが、HE染色像にて筋線維断面積の肥大を確認した。 マイオスタチン遺伝子の抑制に関する研究では、その骨格筋肥大が明らかとされており、本実験においてもマイオスタチンsiRNAによるマイオスタチン遺伝子抑制が行われた結果、咬筋、前脛骨筋の肥大を認めた。筋ジストロフィーモデルマウスでの形態的改善が確認できたことは、マイオスタチンをターゲット遺伝子としたRNAiが筋ジストロフィー治療に対する新規治療として有効であることを示すものである。今後は形態的解析に加えて機能的解析を追加し、治療法の確立を目指す。
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