研究課題
本研究の目的は、バクテリオファージ(ファージ)尾部先端リガンド分子の宿主特異的吸着能を利用した迅速細菌検査法の開発である。はじめに独自に分離した黄色ブドウ球菌ファージS24-1、腸球菌ファージφEF24Cのリガンド分子の解析を行った。次に、ビーズ凝集法を利用したファージリガンド分子の細菌検査方法の可能性検討を行った。ファージリガンド分子の解析1.黄色ブドウ球菌ファージS24-1リガンド分子ORF16:ウエスタンブロット法・質量分析法・免疫電顕法により尾部先端の存在が確認された。また、構造解析により、3つで一つのユニットを形成することが確認された。さらに、黄色ブドウ球菌の細胞壁に存在するwall teichoic acid特異的に認識・結合することが示唆された。現在、国際論文として報告予定である。2.腸球菌ファージφEF24Cリガンド分子ORF31:電子顕微鏡法の改良により、繊細な尾部繊維の存在が明らかにされ、ウエスタンブロット法・質量分析法・免疫電顕法により尾部繊維に存在することが確認された。研究成果は、オンラインジャーナルPLoS ONEへ報告した。ファージリガンド分子の細菌検査方法の可能性検討:黄色ブドウ球菌ファージリガンド分子ORF16結合ビーズの作製を行った。ORF16結合ビーズを様々な細菌に対して凝集反応を行ったところ、黄色ブドウ球菌特異的に凝集反応を示した。よって、ファージリガンド分子を検査法へ応用できる可能性が強く示唆された。まとめ本研究は、比較ゲノムより吸着遺伝子を予測し、その遺伝子産物の機能証明を行った点で、生物学において極めて重要な発見がなされたと考えられる。また、ファージリガンド分子を利用し細菌検出法に応用できる可能性を示した。本法は、2011年9月に特許出願を行っており、細菌検査産業へ新しい可能性を提唱したと考えられる。それゆえ、本年度の研究成果は、産学両面において極めて意義を有する研究であると考えられる。
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