研究概要 |
本年度は、腹側海馬と背側海馬におけるカリウムチャネルの不均一性を電気生理的、免疫組織化学的に解析する計画であった。はじめに、神経細胞の発火性を左右する電位依存性カリウムチャネル(Kv1.3,Kv1.5,Kv2.1,Kv3.1,Kv3.2,Kv4.2,Kv4.3,Kir2.1)を中心に免疫組織化学染色を行った。その中で、Kv1.3とKv1.5については非常に興味深い発現パターンを見出したため、この二つのサブユニットについてさらに解析を進めた。これらのサブユニットは正常な海馬神経細胞ではほとんど確認されないが、カイニン酸痙攣・軸索損傷などの神経障害を引き起こすと、顕著に発現が増加した。Kv1.3,kv1.5の発現は、グリア細胞の一種であるミクログリアにのみ限局し、ニューロンやアストロサイト、オリゴデンドロサイトには発現しなかった。また障害を起こした海馬領域のミクログリア特異的に発現が増加した。さらにKv1.3,Kv1.5を発現する時期は、障害後7~14日の一定期間に限られていた。この時期には、ミクログリアは増殖マーカーなどを発現しないため、増殖直後の完全活性化期に相当すると考えられる。これらのことから、電位依存性カリウムチャネルがミクログリアの活性化マーカーとして用いることができることが示唆された。またミクログリアの電位依存性カリウムチャネルが神経障害の進行に影響を与える可能性が示唆される。
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