研究概要 |
癌遺伝子治療では、癌組織のみに目的遺伝子を発現できるベクターの開発が求められる。それには、標的癌細胞への遺伝子導入効率、導入遺伝子の選択的発現や発現させる目的遺伝子の選択などが重要となる。近年同定されたinterleukin-22 (IL-22)は免疫細胞から上皮細胞への一方向性のシグナル伝達に関与するユニークなサイトカインである。本研究では、上皮細胞を標的とするIL-22とその他のIL-10ファミリーサイトカインによる扁平上皮癌の上皮における分化関連蛋白の発現制御機構を解析する。本年度の研究成果として以下のような点が明らかになった。 IL-22で刺激によるヒト口腔扁平上皮癌由来細胞株における扁平上皮分化関連蛋白の変化を検索するに当たり、まずは実験に用いる培養細胞株におけるIL-22受容体の発現を蛍光免疫染色にて確認した。陽性反応は細胞輪郭を縁取るように見られた。また、IL-22シグナルを培養細胞におけるリン酸化STATの変動にて確認した。そこで、扁平上皮分化関連蛋白としてサイトケラチン1,5,10,14他のmRNA発現変化を対象し、検索を行った。IL-22刺激により腫瘍細胞におけるサイトケラチン1やinvolcrinの発現抑制が認められたものの、その他の検索因子の発現変化に有為な差は認められなかった。前処理としてsiRNAによるSTATの機能抑制を施した細胞では、この発現抑制性効果は減弱した。しかし、コントロール群と比すると完全な回復には至らず、他の因子の関与が考えられた。 次年度は、サイトケラチン1やinvolcrinの発現抑制が腫瘍細胞の形質に如何なる変化をもたらすのかをsiRNA法等による因子の発現抑制や各遺伝子の恒常的あるいは調節発現を腫瘍細胞に施して検索を進めていく。
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