研究概要 |
本研究では、以下の仮説に基づき研究を行ってきた。(1)VacAによるミトコンドリア障害性アポトーシスには、特定のBH3オンリー蛋白、特にBimとPUMAが関わっており、(2)その上流のシグナル伝達にはER stressが貢献している。 <VacAによるアポトーシスに関与しているBH3オンリー蛋白の同定> 胃上皮培養細胞を塩化アンモニウム存在下にVacAで刺激すると、有意なBimのmRNA上昇が見られ(p<0.05)、これらのBH3オンリー蛋白がVacAアポトーシスのに関与している可能性が高いと考えられた。またBimとPUMAはヘリコバクター・ピロリ陽性患者で有意に上昇していた(p<0.05)。 <VacAによるER stressの検討> ヘリコバクター・ピロリ菌陽性患者の胃粘膜では、ER stress markerである、GADD34,GRP78の上昇が見られた(P<0.05)。また胃炎のシドニー分類との相関ではGADD34は前庭部委縮の程度と正の相関を示していた。 現在までの結果より、ヘリコバクターピロリ菌産生毒素VacAはER stress、BH3 only proteinを介して胃上皮細胞をアポトーシスに導く可能性があると考えられた。またヘリコバクター・ピロリ陽性患者胃粘膜でもER stress markerおよびPUMA,Bimの上昇が見られた。ER stress markerを標的とした胃上皮細胞障害の判定や、癌化の予測、治療の個別化に臨床応用できる可能性があると考えられた。
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