心筋虚血再灌流障害に対する虚血性および薬理学的刺激によるプレコンディショニング作用は動物実験において強力な心筋保護作用が示きれているが、実際の臨床現場での応用時には他の投与薬剤の影響を受ける可能性がある。臨床において今日繁用されている麻酔薬としては静脈麻酔薬であるプロポフォールおよび各種ハロゲン化吸入麻酔薬があげられるがこれらの薬剤とプレコンディショニング刺激との相互作用はいまだに明らかにされていない。そこで今回我々はプロポフォールおよび吸入麻酔薬の一種であるセボフルランが、下肢の一過性虚血によってもたらされるリモートプレコンディショニング作用に与える影響について検討した。 まず、雄性ウィスターラットを用いた心筋虚血再灌流モデル(左前下行枝の30分虚血および120分再灌流)を用いて、コントロール群(虚血再灌流のみ)に対するリモートプレコンディショニングの心筋保護効果について検討した。リモートプレコンディショニングはラットの両大腿動脈を皮膚切開の上露出させ、5分間の虚血+5分間の再灌流を5回繰り返して行ったところ、コントロール群と比較して有意な心筋梗塞面積の縮小効果が得られた。そこでリモートプレコンディショニング中に鎮静量のプロポフォールの持続投与したところリモートプレコンディショニングによる保護作用は消失した。一方リモートプレコンディショニング中に吸入麻酔薬を併用したところ両者のもつ心筋保護刺激が相加的に働く可能性が示唆された。以上の結果について今後国内学会および海外の学会において発表を予定している。
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