本研究は過剰歯歯髄からiPS細胞を樹立することを目的に、平成22年度に遺伝子導入のためのプラスミドの増幅を行った。続いて患者から採取した過剰埋伏歯の歯髄細胞を、コラゲナーゼを用いて初代培養し、30日間培養維持した。 また、iPS細胞樹立に必要不可欠なFeeder細胞に関し、複数の異なる薬物耐性を持つFeeder細胞の樹立を試みた。CMVプロモータ下にHygromycin、Puromycin、NeomycinのいずれかとBleomycinの2種類の薬剤耐性遺伝子を持つプラスミドを作成しこれら3つのプラスミドを、それぞれSTO細胞へリポフェクション法にて遺伝子導入を行った。遺伝子導入後より2種類の薬剤にて遺伝子導入細胞の選択を行い、2か月間薬剤投与を続けた。樹立した細胞のES細胞未分化維持能を評価するため、Mitomycin C処理した樹立細胞上にて、muse ES細胞を播種・培養し、継代後のES細胞の形態学的変化について評価を行った。薬剤投与にて選別された、Hygromycin/Bleomycin耐性STO細胞(SHB細胞)、Puromycin/Bleomycin耐性STO細胞(SPB細胞)、Neomycin/Bleomycin耐性STO細胞(SNB細胞)を樹立した。いずれの細胞もSTO細胞とほぼ同じ細胞形態をしており、長期間培養維持が可能(18継代まで確認)であった。また、樹立細胞上に播種されたES細胞については、形態学的には変化は認められず、良好な継代維持が可能であった。 平成23年度には上記の手法を組み合わせ、過剰歯歯髄からiPS細胞を樹立するための直接的な実験を開始したが、本研究をベースとした研究が若手研究(B)に採用となり、本研究の廃止申請に至った。
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