研究課題
レニン-アンジオテンシン系の生理活性物質アンジオテンシンIIは、主にアンジオテンシン1型(AT1)受容体に結合し下流の情報伝達系を活性化することにより高血圧や心血管病の発症・進展に深く関わっているが、2002年に米国より提唱され本邦でも1300万人を超えるとされる慢性腎臓病の病態への関与も指摘されている。本研究テーマであるアンジオテンシン受容体結合蛋白(ATRAP)はAT1受容体に特異的に結合する新規蛋白であるが、我々は、生体において、アンジオテンシンIIを介した高血圧・腎障害の進展に、腎局所におけるATRAP/AT1受容体発現比の低下およびAT1受容体のインターナリゼーションの抑制が関与していることを明らかにした。また、現在、臨床医療で汎用されているAT1受容体遮断薬(ARB)が腎局所におけるATRAP/AT1受容体発現比のバランスを良好に改善させ、アンジオテンシンIIを介した高血圧・腎障害を抑制するメカニズムを示した。さらに、腎局所におけるATRAP発現量を持続的に増加させ、結果としてATRRP/AT1受容体発現比を増加させることによってAT1受容体のインターナリゼーションが促進され、アンジオテンシンIIを介した腎障害が抑制されることを明らかにした。以上により、ATRAPが慢性腎臓病治療における新たな標的分子となる可能性が明らかにされた。ATRAPの分子作用機序はARBと異なると考えられるため、より効率的にAT1受容体情報伝達系を抑制し、画期的な治療につながる可能性がある。
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American Journal of Physiology Renal Physiology
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Hypertension
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