研究概要 |
心肥大に伴い、血管新生が起こるが、その詳細な分子機構については不明な点が残されている。本研究ではp300/GATA4転写経路は血管新生においても重要な役割を担っていると考え、p300/GATA4による血管新生因子の発現調節機構を解明することを目的とした。平成22年度の研究実施計画として、p300及びGATA4を過剰発現させ、VEGF-AのmRNA発現量をリアルタイムPCRで、VEGF-Aのプロモーター活性をレポータージーンアッセイで検討することとした。その結果、GATA4,p300単独の過剰発現においてVEGF-Aの転写活性やmRNA発現量は増加する傾向が見られた。さらにp300及びGATA4を共発現させるとさらに増加する傾向が見られた。また新規GATA4結合タンパク質として同定されたメチルトランスフェラーゼPRMT5を共発現させるとこれらの転写は抑制された。以上のようにp300/GATA4転写経路は血管新生因子VEGF-Aの転写誘導に関与していることが示唆された。p300/GATA4経路は、血管新生因子の転写反応にも寄与する可能性が示唆されたことから、心肥大・心不全の新たな治療標的となることが考えられる。さらに新規GATA4結合分子によるこの経路への寄与が解明できれば、GATA4を中心とした転写反応のコントロールが可能となり、虚血性心疾患などの疾患へのより多様な応用へとつながっていくことが考えられる。
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