食道癌は、極めて悪性度の高い難治性の癌であり、手術、化学放射線療法、抗癌剤及び分子標的治療等の集学的な治療が望まれる。しかし、未だ実地臨床の現場で有望な診断及び治療標的分子は少ないのが現状である。申請者は、既知の食道扁平上皮癌の増幅領域のうち1q32-41増幅領域の再評価により、細胞増殖と腫瘍の悪性度に関わる新しい癌関連遺伝子SMYD2を同定した(Komatsu S. et al. Carcinogenesis2009)。今回は、消化器癌において(1)発癌、悪性度に関するSMYD2の分子機構の更なる解明(下流分子、標的分子の同定)、(2)化学放射線療法の感受性予測や耐性作用の解明、(3)1q32-41増幅領域内の他の増殖・浸潤・悪性度に関する分子の解析について計画した。 (1)については、胃癌細胞株を用いた詳細な解析を開始した。SMYD2特異的なsiRNAを用いたノックダウン実験、MTTアッセイ、細胞形態評価により、胃癌においてもSMYD2が細胞増殖に関わる分子であることを明らかにした。また、癌抑制遺伝子・RB遺伝子との関連を明らかにしつつある。(2)については、胃癌手術症例のコホートを作成し、組織型別の発現頻度、再発との関連を明らかにしつつある。(3)については、同領域内の癌遺伝子候補TMEM206、DTLについて詳細な解析を行っている。また、過去に開始した研究内容を、本研究課題とともに発展させた論文を3報報告し、国内の学会にも報告した。今年の研究成果を更に発展させ、実地診療に還元すべく臨床応用を目指して今後研究を継続する予定である。また、当研究成果は国内外学会、欧文誌に積極的に報告する予定である。
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