研究概要 |
神経障害性モデルにおけるリコモジュリンの痛覚過敏抑制効果とその細胞内シグナリングについて調査を行った。 SDラットのL5坐骨神経を結紮し、神経障害性疼痛モデル(SNL ; Spinal Nerve Ligation model)を作成した。処置時にリコモジュリンを一次知覚神経周囲に投与し、その後、行動解析により痛覚閾値の変化を調査した。処置後3日目より熱刺激、処置後5日目より機械刺激に対する痛覚過敏が抑制され、それは処置後7日目まで持続した。免疫組織化学によりリコモジュリン投与群のTRPV1陽性細胞の割合は非投与群に比べ有意に低く、未処置群と同程度であった。またリコモジュリン投与量を0.025-2.5(ug/kg)と変化させ、痛覚閾値の変化を行動解析により調査した。リコモジュリンの痛覚過敏抑制効果は0.025(ug/kg)から認められることが分かった。処置後1,3,5,7日目に一次知覚神経を摘出し、免疫組織化学によりHMGB-1の発現を解析した。その結果、未処置群と比べSNL群ではHMGB-1陽性細胞が増加しており、またリコモジュリン投与群においてもHMGB-1陽性細胞が増加していた。これらの結果からリコモジュリンが痛覚過敏を抑制すること、またリコモジュリンのHMGB-1抑制作用以外の機序により痛覚過敏を抑制している可能性があることが示唆された。以上の結果を踏まえ、今後より低濃度のリコモジュリンの痛覚過敏抑制効果を検討するとともに、RAGE,TLR2,4、p38MAPK,ERK1/2の発現解析を行うことによりその細胞内シグナリングを調査し、またHMGB-1のmRNAやタンパク質の経時的変化を免疫組織化学的手法、Real-Time(RT)-PCR法やELISA法により調査する予定である。
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