本研究では限界集落で暮らす住民が、生活し続ける意味と健康な暮らしを支える要因を検討していくことを目的とした。 京都府北部の中山間地域における限界集落の独居高齢者を対象とし、B集落5名の女性(平均年齢83.4歳)にインタビュー調査を実施した。インタビュー内容を逐語化にしてGrounded Theory Approachを用いて分析した。 限界集落の生活を支える要因としては「地域で培ってきた人間関係」、「自然と共存する郷土への愛着」、「生活を支える精神的な強さ」、「健康への自負心」の4つのカテゴリーが抽出された。「地域で培ってきた人間関係」とは、互いに支えあい、人間関係の距離感やバランスを保ち、地域での強い絆を培ってきたことである。「自然と共存する郷土への愛着」とは、不便な生活環境や動物の被害、自然災害などの厳しい環境を受け入れ、郷土への強い愛着を持ち、これからも住み続けたい想いを強く抱いていることであった。「生活を支える精神的な強さ」とは、仲間と一緒に栃の実を用いたおかき作りの作業を楽しみ、生きがいとし、強い精神力をもちながら、限界集落という地域で力強く生活をしていることである。「健康への自負心」とは、自身の健康な身体に対して自信をもつ一方、豊かな自然環境で生活することで大病を患わず健康でいられるというとらえ方をしていたことであった。 対象者は限界集落の生活を4つのカテゴリーに示された要因によって、支え、継続していたと考える。今後、さらに詳細な分析を重ねて、限界集落に住む独居高齢者の健康な暮らしを支える要因を検討し、専門職者による支援方法の検討が必要である。
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