本研究の目的は、がんの初期段階からの緩和ケアを提供する看護師の役割と課題を明らかにすることである。平成22年度は目的を達成するために、AからCの3点を実施した。 A:早期緩和ケアに関する文献検討 海外における早期緩和ケアに関する研究結果として、2010年秋頃よりTemelらによる、非小細胞肺がん患者を対象に早期緩和ケアの導入を行なった結果、行なわなかった群よりQOLが向上していることが明らかとなった。この研究に関連し、現在、対象疾患を拡大した早期緩和ケアの研究が行なわれている。しかし、看護師の専門的なアプローチについて明らかにすることが課題として残されていることがわかった。 B:早期緩和ケア看護モデル研修 米国での早期緩和ケアに関する先行研究を実施した関連施設の高度実践看護師とコンタクトをとり、研修計画の作成と調整を行なった。平成23年4月に実施予定である。米国の高度実践看護師との情報共有では、早期緩和ケアが患者のQOLを向上させるという研究結果が発表されたことにより、米国では対象疾患の拡大やチーム医療のなかでの看護の専門的アプローチや役割について明らかにするために新たな研究に取り組まれていることがわかった。平成23年度は実践場面の研修を行ない、知見を広げていくことが重要である。 C:早期緩和ケアの現状と看護師の課題 がんの初期段階から緩和ケアの提供を行なっているがん看護専門看護師を対象にフォーカス・グループインタビューを行なうために、所属施設の倫理審査を受け、承諾された。平成23年5月にグループインタビューを実施するための準備・調整を行なった。この結果を基に、早期緩和ケア実践におけるがん看護専門看護師の専門的な看護実践について半構造的面接法を用いた個人インタビューを行ない、看護師の役割と課題を明確にしていきたい。
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