研究概要 |
本研究の最終目標である歯髄創傷治癒メカニズムの解明と象牙質・歯髄複合体再生療法の確立の達成に向け、本研究では、我々が樹立した象牙芽細胞様細胞株(KN-3細胞)を用い、骨形成促進因子(Bone Morphogenetic Protein-2, BMP-2)が象牙芽細胞分化に与える影響を検討した。まず、、KN-3細胞に影響を及ぼすBMP-2の至適濃度を決定するために、BMP-2の存在下・非存在下でKN-3細胞を培養後、形態変化を位相差顕微鏡で観察したところ、BMP-2によりKN-3細胞は象牙芽細胞様の形態を呈した。しかし、細胞中のミトコンドリア脱水素酵素によるテトラゾリウム塩(WST-1)のホルマザン色素への変換を測定することによる細胞増殖能への影響、およびアルカリ性フォスファターゼ(ALP)活性測定による石灰化能への影響は認められなかった。そこで、至適濃度を100ng/mlに決定した。次に、至適BMP-2濃度をKN-3細胞に作用させ、BNPシグナル伝達に関与するSmad1/5/8のリン酸化、およびinhibitory Smad6/7の発現、さらに、象牙芽細胞の分化マーカーであるDSP、 DMP~P-1の発現をウエスタンブロッティング法で解析した。その結果、Smad1/5/8のリン酸化、Smad6/7の発現、およびDSP、 DMP1、およびDSPPの発現上昇が誘導されることが明らかとなった。以上の結果は、BMP-2誘導性Smadシグナル伝達経路の活性化が象牙芽細胞様細胞株(KN-3細胞)の分化に影響を与えることを示唆している。
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