研究概要 |
本研究の最終目標である歯髄創傷治癒メカニズムの解明と象牙質・歯髄複合体再生療法の確立の達成に向け、骨形成促進因子(Bone Morphogenetic Protein-2,BMP-2)あるいは線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor-2,FGF-2)を徐放するゼラチン・スポンジを用い、3次元的環境下における象牙芽細胞分化と象牙質形成メカニズムを明らかにするために、in vitroでのBMP-2解析結果をまとめた。さらに、KN-3細胞におけるFGF-2の影響を検討した。FGF-2の存在下・非存在下でKN-3細胞を培養後、形態変化を位相差顕微鏡で観察したところ、FGF-2によりKN-3細胞の突起の伸長が認めら、神経細胞様を呈していた。しかし、ウエスタンブロッティング法での解析では神経細胞分化マーカーNF68の発現は認められなかった。そこで、象牙芽細胞の分化マーカーであるDSP、DMP-1の発現を解析したところ、発現上昇が誘導された。次に、FGFシグナル伝達に関与するAkt、ERK、p38のリン酸化の発現をウエスタンブロッティング法で解析した。その結果、ERKのリン酸化の発現上昇がFGF-2濃度5ng/mlの30分間刺激で誘導された。さらに、ERKのリン酸化阻害剤U0126と5ng/ml FGF-2を共に刺激したところ、KN-3細胞のFGF-2による細胞突起伸長は抑制された。以上の結果は、FGF-2誘導性ERKシグナル伝達経路の活性化が象牙芽細胞様細胞株(KN-3細胞)の細胞突起伸長および分化に影響を与えることを示唆している。 今後、象牙芽細胞の分化メカニズムをさらに解析するとともに、in vivoでの研究も行っていく予定である。
|