当該年度は、『咀嚼刺激や咬合不全の誘発によって脳内でのMEMRI信号が検出できるかどうか』との仮説のもとに、実験を行った。MRI撮影装置には小動物用MRI撮影装置(MRmini)を用いた。実験動物としてWistar系ラットを用い、24時間に及ぶ絶食を行ったあと塩化マンガンを腹腔内投与した。実験群として咀嚼刺激を誘発するために固形飼料を給餌させる群と、対照群として固形飼料を給餌させない群の2群を設定した。12時間経過後、MRIのT1強調画像を用いて咀嚼刺激による脳組織内のMEMRI信号の検出を試みた。しかし結果としては、マンガン投与直後より飼育飼料を与えたが、マンガン毒性による副作用によりほとんど飼料摂取が行えないことや、自発行動が低下することから、自発的な咀嚼行為を望むことは困難であることが示唆された。 そのため、咬合接触を人工的に与えるため、歯科のレジン系充填材料を臼歯部歯列に築盛してMEMRI信号の検出を行うことにしたが、マンガン毒性の影響により脳内神経活動部位を特定することはできず、比較を行うことができなかった。 今回は、血液脳関門を破綻させずに脳の微細構造を確認する神経構造マンガン造影MRI法を用いて脳内神経活動部位の評価を行うことにしたが、この手法は全身性に大量の塩化マンガンを投与する必要がある。よって、今後の研究課題として神経回路を確認することを目的とした神経トレース・マンガン造影MRIの手法を取り入れ、MEMRI信号の検出を試みることとする。
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