研究課題
脂質異常や肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病の病態基盤における慢性炎症反応の関与が注目されている。しかし、これらの病態では感染の関与はほとんどなく、その無菌性の炎症反応がどのようにして惹起されるのかは全くわかっていない。最近、インフラマソームと呼ばれるシグナル分子複合体が、痛風やアスベスト肺における無菌性の炎症を引き起こしていることが明らかとされた。本研究では、脂質異常や肥満、糖尿病、高血圧といった生活習慣病におけるインフラマソーム、およびその治療標的としての役割を明らかにし、インフラマソーム制御による新規の治療戦略の構築を目的としている。当該年度では動脈硬化モデルマウスであるapoE-ノックアウト(KO)マウスにASC-KOマウスおよびCaspase-1-KOマウスを掛け合わせたダブルノックアウト(DKO)マウスを作成し、Western Dietを給餌させ動脈硬化を誘導し検討を行った。Western Diet給餌から12週間後の大動脈をSudan IV染色で動脈硬化巣の評価を行ったところ、apoE-KOマウスに比べapoE/Caspase-1-DKOマウスでは有意に病変の抑制が確認された。一方apoE/ASC-DKOマウスでは抑制が認められず、逆に腹部では顕著に増悪する傾向が認められた。さらに大動脈起始部においてOil Red O染色および免疫染色で動脈硬化病変およびマクロファージの浸潤を評価したところ、apoE/ASC-DKOマウスではapoE/Caspase-1-DKOマウスほどの抑制効果が認められなかった。以上の結果から動脈硬化形成での炎症にインフラマソームが関与していること、インフラマソーム構成分子のASCとCaspase-1では異なった機能を有することが示唆された。今後、より詳細なメカニズムを解析することによりインフラマソームが治療標的となり得ることが期待される。
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Circulation
巻: 123 ページ: 594-604
Cardiovasc Res
巻: Jan11(in press)